仮差押とは? 基礎知識を分かりやすく解説
仮差押(かりさしおさえ)とは、将来的に金銭の支払いを受けたり、特定の財産を確保したりするために、あらかじめ相手の財産を一時的に凍結する手続きのことです。具体的には、裁判所に申し立てを行い、裁判所がそれを認めると、相手の財産(不動産、預貯金、給与など)を処分できなくすることができます。
今回のケースでは、土地の所有者が、その土地上の建物の撤去と土地の明け渡しを求める権利(建物収去土地明渡請求権)を持っています。しかし、もし相手が自ら建物を撤去しない場合、所有者は裁判所の許可を得て、代わりに建物を撤去する(代替執行)ことになります。この代替執行にかかる費用を、あらかじめ相手に負担させるために、仮差押を行うのです。
仮差押は、最終的な判決が出る前に、相手が財産を隠したり、処分したりするのを防ぐための重要な手段です。これにより、勝訴した場合に、確実に債権(ここでは代替執行費用)を回収できる可能性を高めることができます。
今回のケースへの直接的な回答:見積価格でも仮差押は可能
ご質問の「見積価格でも仮差押できるか?」という点についてですが、結論から言うと、見積価格でも仮差押は可能です。裁判所は、仮差押の申立てがあった場合、その請求原因(なぜお金を請求するのか、または財産を確保したいのか)と、請求する金額(債権額)を審査します。
代替執行費用の場合、現時点では正確な金額を確定することが難しい場合があります。なぜなら、実際に代替執行を行う時期や、その際の状況によって、費用が変動する可能性があるからです。そのため、現時点で見積価格しか提示できない場合でも、裁判所はそれを考慮して仮差押を認めることがあります。
ただし、見積価格を根拠とする場合、裁判所は、その見積もりの根拠となる資料(見積書など)の提出を求めるのが一般的です。また、仮差押の金額は、最終的に発生する可能性のある費用をある程度カバーできるような金額に設定されることが多いです。
関係する法律や制度:民事執行法と債権保全
今回のケースで関係する主な法律は、民事執行法です。民事執行法は、裁判所の判決に基づいて、債権者が債務者の財産から債権を回収するための手続きを定めています。仮差押は、この民事執行の手続きを円滑に進めるための準備段階として位置づけられます。
また、民法では、債権を保全するための様々な手段が定められています。仮差押もその一つであり、債権者が将来的に債権を確実に回収できるように、債務者の財産を保全する役割を果たします。
誤解されがちなポイント:仮差押の金額と、実際の費用の関係
仮差押の金額は、あくまでも「現時点で見積もられる費用」を基に設定されます。そのため、実際に代替執行を行う際に、見積もりよりも費用が高くなることも、安くなることもあり得ます。
誤解されがちな点として、仮差押の金額が、そのまま最終的な債権額になるとは限らないという点があります。仮差押は、あくまでも財産を確保するための手段であり、最終的な債権額は、裁判所の判決や、実際の執行にかかった費用によって確定します。
例えば、仮差押で100万円を請求し、裁判で勝訴したとしても、実際に代替執行にかかった費用が80万円だった場合、債務者は80万円を支払えば良いことになります。逆に、120万円かかった場合は、追加で20万円を請求できる可能性があります。
実務的なアドバイスと具体例:見積書の準備と、費用の追加請求
実務的なアドバイスとしては、以下の点が挙げられます。
- 詳細な見積書の取得: 複数の業者から見積もりを取り、最も現実的な費用を算出しましょう。見積書は、裁判所に提出する際に重要な証拠となります。見積書には、解体工事の内容、使用する資材、人件費などが詳細に記載されていることが望ましいです。
- 予備費の計上: 見積価格に加えて、不測の事態に備えて、ある程度の予備費を計上することも検討しましょう。例えば、解体工事中に思わぬ障害物が見つかったり、追加の作業が必要になったりする場合に、この予備費が役立ちます。
- 費用の追加請求: 実際に代替執行を行った結果、仮差押の金額を超えて費用が発生した場合は、追加で債務者に請求することができます。そのためには、執行費用に関する詳細な記録(領収書など)を保管し、裁判所に提出する必要があります。
- 弁護士への相談: 仮差押の手続きや、その後の執行手続きは、専門的な知識を要します。弁護士に相談することで、適切なアドバイスとサポートを受けることができます。
具体例として、Aさんが所有する土地にBさんの建物があり、Bさんが立ち退かないケースを考えてみましょう。Aさんは、Bさんに対して建物収去土地明渡請求訴訟を起こし、勝訴しました。しかし、Bさんが建物を撤去しないため、Aさんは裁判所の許可を得て、建物を強制的に撤去する(代替執行)ことになりました。この場合、Aさんは、あらかじめ代替執行にかかる費用を仮差押しておくことで、Bさんが費用を支払わない場合に備えることができます。
専門家に相談すべき場合とその理由:弁護士の役割
仮差押の手続きは、専門的な知識と経験を必要とするため、弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は、以下の点でサポートしてくれます。
- 法律相談: 状況に応じた適切な法的アドバイスを提供し、仮差押の必要性や、その可能性を判断します。
- 書類作成: 裁判所に提出する申立書や、その他の書類を適切に作成します。
- 手続き代行: 裁判所とのやり取りや、その他の手続きを代行します。
- 交渉: 相手方との交渉を代行し、円満な解決を目指します。
- 訴訟対応: 訴訟になった場合、代理人として法廷で弁護活動を行います。
特に、仮差押の請求原因や、請求金額の設定は、非常に重要です。弁護士は、過去の事例や、関連する法律に基づいて、最適な方法を提案してくれます。また、仮差押後の執行手続きについても、弁護士のサポートを受けることで、スムーズに進めることができます。
まとめ:仮差押のポイントと、その後の注意点
今回の重要ポイントをまとめます。
- 代替執行費用の仮差押は、見積価格でも可能です。
- 見積価格を根拠とする場合、詳細な見積書の提出が求められます。
- 仮差押の金額は、最終的な債権額と異なる場合があります。
- 実際に費用が発生した場合、追加で請求することができます。
- 弁護士に相談することで、手続きをスムーズに進めることができます。
仮差押は、債権を保全するための有効な手段ですが、その手続きは複雑であり、専門的な知識を要します。今回の解説を参考に、ご自身の状況に合わせて、適切な対応をとってください。

