不動産登記：根抵当権分割譲渡の謎！AとBの共有権をいきなり分割できない理由とは？

【背景】
私は、AさんとBさんで共同で所有している不動産に設定されている根抵当権を、それぞれが個別に譲渡したいと考えています。しかし、不動産登記の専門家から、AさんとBさんの共有する根抵当権をいきなり分割して譲渡することはできないと説明を受けました。

【悩み】
なぜ、AさんとBさんの根抵当権をいきなり分割して譲渡できないのでしょうか？法令上の問題なのか、それとも何らかの理論的な理由があるのでしょうか？一見、分割して譲渡しても問題ないように思えるのですが、その理由がどうしても理解できません。

根抵当権は分割譲渡できません。債権の性質による制限です。

根抵当権の基礎知識

まず、根抵当権（こんていとうけん）とは何かを理解しましょう。これは、不動産を担保（担保権（たんぽけん）：債務者が債務不履行に陥った場合、債権者が債務者の財産を差し押さえて債権を回収できる権利）として、複数の債権をまとめて担保する権利です。例えば、銀行から複数回にわたって融資を受けている場合、それぞれの融資ごとに抵当権を設定する代わりに、一つの根抵当権を設定することで手続きを簡素化できます。

重要なのは、根抵当権は「一体不可分」であるという点です。これは、根抵当権が設定された不動産全体を担保として、複数の債権をまとめて担保する権利であるため、一部だけを分離して譲渡することができないことを意味します。まるで、一つの大きなケーキを、何個かの小さなケーキに分割して譲渡できないのと同じです。

なぜ根抵当権は分割譲渡できないのか？

質問者様は、AさんとBさんが共有する根抵当権を、いきなり分割して譲渡できない理由を疑問に思われています。これは、根抵当権の「一体不可分性」という性質によるものです。根抵当権は、設定された不動産全体を担保として、複数の債権をまとめて担保する権利です。そのため、債権の一部だけを分離して譲渡することは、担保の範囲を曖昧にし、債権者間の権利関係を複雑化してしまう可能性があります。

仮に分割譲渡を認めてしまうと、債権者同士で担保の優先順位（どの債権者が先に不動産を差し押さえられるか）の争いが発生する可能性が高まります。これは、登記制度の秩序を乱すだけでなく、債権者間の紛争を招く危険性があります。

誤解されがちなポイント

根抵当権の「分割譲渡」と「債権の譲渡」を混同しやすい点が挙げられます。根抵当権の分割譲渡はできませんが、根抵当権に基づく債権自体は譲渡可能です。つまり、AさんとBさんは、それぞれが持つ債権の割合に応じて、債権を個別に譲渡することはできます。ただし、この場合でも、根抵当権そのものは分割されず、依然として不動産全体を担保としています。

実務的なアドバイスと具体例

AさんとBさんがそれぞれ個別に根抵当権に基づく債権を譲渡したい場合は、まず、債権の割合を明確にする必要があります。その後、それぞれの債権を個別に譲渡する契約を結び、登記手続きを行います。この場合、根抵当権自体は分割されませんが、債権の所有者は変更されます。

例えば、AさんとBさんがそれぞれ債権の50%ずつを所有している場合、Aさんは自分の債権50%をCさんに、Bさんは自分の債権50%をDさんに譲渡できます。ただし、根抵当権の登記は、変更されません。

専門家に相談すべき場合とその理由

根抵当権の債権譲渡は、法律的な知識が必要な複雑な手続きです。債権の割合の算定、譲渡契約の作成、登記手続きなど、専門的な知識がないと、誤った手続きをしてしまい、トラブルに巻き込まれる可能性があります。そのため、不動産登記や債権譲渡に詳しい弁護士や司法書士などの専門家に相談することを強くお勧めします。

まとめ

根抵当権は、その一体不可分性から、分割譲渡することができません。しかし、根抵当権に基づく債権自体は譲渡可能です。債権の譲渡は専門的な知識が必要なため、専門家への相談が不可欠です。誤った手続きを避けるためにも、専門家のアドバイスを仰ぎ、安全に手続きを進めることを心がけましょう。