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  • 【共有特許】侵害訴訟の費用は誰が払う?持分での負担は危険?契約で決めるべき費用分担ルール

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特許を複数人で共有する場合、侵害訴訟などの裁判費用は、特許の持分に応じて負担するのがルールなのでしょうか?トラブルを避けるために、事前に決めておくべきことはありますか?

結論から言うと、法律には裁判費用の負担割合を定めた明確な規定はなく、必ずしも持分に応じて負担するわけではありません。

最も重要なのは、特許を出願する前に『共同出願契約』を締結し、その中で紛争時の費用負担について明確に定めておくことです。これを怠ると、いざという時に高額な費用を巡って共有者間で深刻なトラブルに発展するリスクがあります。

この記事では、なぜ法律に定めがないのか、そして契約で何を定めておくべきかを詳しく解説していきます。

なぜ法律に「費用負担」の定めがないのか?

特許の出願料や維持費用(特許年金)については、民法の共有物の規定が準用され、持分に応じて負担するのが一般的です。しかし、これが「訴訟費用」となると話は別です。なぜなら、訴訟は個々の利害や経済状況が複雑に絡むため、一律のルールを法律で定めることが難しいからです。

特許法が想定する「特許権の行使」

特許法では、「特許権が共有であるときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について(中略)訴えを提起することができない」(特許法第73条3項など)と定められています。つまり、訴訟を起こすかどうかの意思決定は、共有者全員の同意が必要、ということです。

しかし、法律は「誰が費用をいくら出すか」までは定めていません。「全員でやると決めたのだから、費用も持分通り」と考えるのは自然ですが、実際にはそう単純ではありません。

「持分に応じた負担」の原則とその限界

例えば、持分90%を持つ大企業と、10%を持つ個人発明家がいたとします。大企業は訴訟に乗り気でも、個人発明家には訴訟費用の10%(数百万円になることも)を捻出するのが困難かもしれません。逆に、個人発明家はすぐにでも訴訟で権利を守りたいのに、大企業が費用対効果を考えて消極的になるケースもあります。

このように、共有者間の資力や考え方の違いがあるため、「費用負担」は法律で縛るのではなく、当事者間の私的な契約に委ねられているのが実情です。

トラブルを未然に防ぐ「共同出願契約」で決めるべき5項目

将来の憂いをなくす最善策は、特許出願前に共有者全員で「共同出願契約書」を締結することです。これは、共有特許の運用ルールブックであり、特に以下の5項目を明確に定めておくことが重要です。

  1. 費用負担の割合と範囲
    訴訟費用や審判費用をどう分担するかを具体的に決めます。「持分に応じて負担する」以外にも、「均等に負担する」「訴訟を主導した者が多く負担する」など、様々な選択肢が考えられます。
  2. 意思決定のプロセス
    侵害を発見した際、「訴訟に踏み切るか」「和解するか」をどう決めるのか。全員一致が原則ですが、「過半数の賛成で決定する」など、柔軟なルールを設けることも可能です。
  3. 訴訟の主担当者(イニシアチブ)
    実際に訴訟を進めるにあたり、誰が中心となって弁理士や弁護士とのやり取りを行うのか、主導権の所在を明確にしておくと、いざという時にスムーズです。
  4. 獲得した賠償金の分配方法
    無事に訴訟に勝ち、相手方から損害賠償金を得られた場合に、それをどう分配するかも重要です。費用を多く負担した者に多く分配するなど、負担とリターンをセットで決めておきましょう。
  5. 権利の放棄・譲渡時のルール
    訴訟の途中で、ある共有者が「もう降りたい」と持分を放棄したり、他人に譲渡したりする場合のルールも定めておくと、残された共有者が不利益を被るのを防げます。

この記事の重要ポイント

  • ポイント1:共有特許の侵害訴訟にかかる費用は、法律で負担割合が定められておらず、自動的に持分負担となるわけではありません。
  • ポイント2:最も確実な対策は、特許出願前に「共同出願契約」を締結し、費用負担や意思決定のルールを書面で明確に定めておくことです。
  • ポイント3:契約書では、費用負担だけでなく、獲得した賠償金の分配方法までセットで決めておくことが、後のトラブルを防ぐ鍵となります。

まとめ:事前の「契約」が、未来の「紛争」を防ぐ

最後に、今回のポイントを整理します。

  • 法律に規定なし:共有特許の訴訟費用の分担について、特許法に明確なルールはありません。
  • 「持分負担」は危険:「当然、持分に応じて負担だろう」という思い込みは、共有者間の経済状況や考え方の違いにより、将来の紛争の火種となります。
  • 契約こそが最善策:トラブルを未然に防ぐ最も有効な手段は、出願前に共有者全員で「共同出願契約」を交わし、費用負担を含む運用ルールを合意しておくことです。

ご覧いただいたように、共有特許は強力な権利であると同時に、その運用には共有者間の緊密な連携が求められます。特に、訴訟という非日常的な事態に直面した際、事前の取り決めがなければ、本来協力すべきパートナーとの間で深刻な対立が生じかねません。

円満かつ生産的なパートナーシップを維持し、大切な知的財産を最大限に活用するためにも、まずは共同出願契約の作成について、弁理士や知的財産に詳しい弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

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