• Q&A
  • 動産売買における所有権移転の段階的移転:特注機器の製造・供給契約におけるリスクと対策

共有持分についてお困りですか?

おすすめ3社をチェック

動産売買における所有権移転の段階的移転:特注機器の製造・供給契約におけるリスクと対策

【背景】
* 特注のガスタービン製造・供給を依頼しました。
* 製造期間が長く、複数回にわたる支払いを予定しています。
* 支払途中に製造業者が機器を納入します。
* 機器の性能確認後、最終支払いを予定しています。

【悩み】
製造業者(A)は支払額に応じて段階的に所有権を移転したいと言っています。しかし、全額支払いが完了するまで所有権は移転したくないです。段階的移転とはどういう意味で、支払いが完了する前に製造業者が倒産した場合、機器を取り戻せなくなるのでしょうか?

所有権移転は、全額支払い完了時。支払途中の倒産リスクは、契約で担保設定等を。

回答と解説

テーマの基礎知識(定義や前提の説明)

このケースは、動産(この場合はガスタービン)の売買契約に関する所有権移転の問題です。一般的に、動産の所有権は、売買契約が成立し、売買代金が完全に支払われた時点で、売主(B)から買主(A)に移転します(所有権移転の原則)。しかし、特注品のように製造に時間がかかる場合、売買代金を分割で支払うことが一般的です。この場合、所有権移転のタイミングをどのように定めるかが重要になります。

今回のケースへの直接的な回答

質問者様の懸念は正しく、契約書に特別な定めがない限り、BからAへの所有権の移転は、全額の支払いが完了した時点で行われます。Aが支払途中に倒産した場合、Bは未払いの代金を請求する権利を持ち、さらに、所有権を主張して機器を取り戻すことができます。Aが「支払額に応じて段階的に所有権移転が移転する」と主張しているのは、契約書にそのような条項がない限り、法的根拠がありません。

関係する法律や制度がある場合は明記

民法(特に第535条以降の売買に関する規定)が関係します。民法では、売買契約において、所有権の移転は原則として売買代金の支払完了を要件とします。ただし、当事者間の合意によって、所有権移転の時期を別に定めることができます。

誤解されがちなポイントの整理

「段階的移転」という言葉は、所有権の移転が段階的に行われるという意味ではありません。これは、所有権の移転時期を、代金の支払い状況と連動させる方法の一つである「所有権留保(所有権の留保)」(所有権を移転しないという条件で商品を売る契約)と混同している可能性があります。所有権留保は、契約で明確に合意しなければ成立しません。単に「段階的移転」という表現だけでは、所有権留保が成立したとはみなされません。

実務的なアドバイスや具体例の紹介

Bは、Aとの契約において、以下の点を明確にする必要があります。

  • 所有権移転の時期: 全額支払完了時と明記する。
  • 代金未払いの場合の措置: 未払いの場合、Bが機器を回収できることを明記する。
  • 担保設定: Aが倒産した場合に備え、機器を担保として設定する(抵当権の設定など)。

例えば、契約書に「本契約に基づく機器の所有権は、買主(A)が売主(B)に対し、売買代金を全額支払った時点で移転するものとする」と明記することで、所有権移転の時期を明確にできます。さらに、Aが代金を支払わない場合に、Bが機器を回収できる旨を明記し、必要に応じて担保設定を行うことでリスクを軽減できます。

専門家に相談すべき場合とその理由

契約書の作成や交渉は、専門家である弁護士や司法書士に依頼することをお勧めします。複雑な契約内容や、高額な取引の場合、専門家の助言を得ることで、リスクを最小限に抑え、自らの権利を確実に保護することができます。特に、所有権留保や担保設定といった専門的な知識が必要となる場合は、専門家のサポートが不可欠です。

まとめ(今回の重要ポイントのおさらい)

特注品の製造・供給契約において、所有権移転のタイミングは、契約書で明確に定めることが非常に重要です。支払途中の倒産リスクを回避するためには、全額支払完了時を所有権移転の時期とすること、代金未払いの場合の措置を明確にすること、そして必要に応じて担保を設定することが不可欠です。不明な点があれば、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。

Editor's Picks

共有持分についてお困りですか?

おすすめ3社をチェック

pagetop