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即時取得の性質:動産取引における承継取得と原始取得の微妙な関係

【背景】
私は、動産取引における「即時取得」について勉強しています。即時取得は、動産(不動産ではない、自由に移動できる財産)の取引の安全性を高めるための制度だと理解しています。売買だけでなく、贈与や質権設定、代物弁済、消費貸借、強制競売など、様々な場面で適用されるようです。

【悩み】
即時取得は原始取得(新しく所有権を取得すること)だと考えていたのですが、ある資料に「承継取得(例:贈与・売買・相続)」「原始取得(例:時効取得・無主物先占)」という分類がありました。即時取得は原始取得に分類されると思うのですが、資料では贈与や売買を承継取得の例として挙げている点が理解できません。贈与や売買は承継取得と原始取得のどちらにもなり得るのでしょうか? また、資料がわざわざ承継取得の例に贈与や売買を挙げた意図も気になります。

即時取得は原始取得です。贈与・売買は原則承継取得ですが、即時取得の成立により原始取得とみなせます。

動産における所有権移転と即時取得の基礎知識

まず、動産の所有権移転について理解しましょう。一般的に、動産の所有権は、売買契約が成立し、目的物(売買の対象となるもの)の引渡し(所有権の移転を伴う行為)が行われることで移転します。しかし、この引渡し前に、所有者が変わってしまうリスクがあります。例えば、売主が、既に別の者に目的物を売却していた場合などです。

そこで登場するのが「即時取得」です。これは、善意(悪意ではないこと)で、かつ、無過失(過失がないこと)で、所有権を有する者から動産を取得した場合、たとえ売主が所有権を移転する権限がなかったとしても、取得者は所有権を取得できるという制度です(民法119条)。つまり、後で所有権の欠陥が判明しても、取得者は所有権を失うことはありません。

即時取得はなぜ原始取得とみなされるのか?

即時取得は、一見すると、前の所有者から所有権を「承継」しているように見えます。しかし、法律上は、所有権の欠陥を「消滅」させ、取得者に対して新たに所有権を「発生」させるものとして扱われます。この点が、原始取得とみなされる理由です。

即時取得と関係する民法の規定

即時取得の根拠となるのは、民法第119条です。この条文は、善意・無過失の取得者を保護する規定であり、動産取引における安全性を確保する上で非常に重要な役割を果たしています。

承継取得と原始取得、そして即時取得の分類

資料の分類は、所有権取得の一般的な分類です。承継取得は、既存の所有者から所有権が移転する取得方法です(例:売買、贈与、相続)。一方、原始取得は、既存の所有者とは無関係に、新たに所有権が発生する取得方法です(例:時効取得、無主物先占)。

即時取得は、一見承継取得のように見えますが、所有権の欠陥を消滅させ、新たな所有権を発生させるため、結果として原始取得とみなされます。

贈与・売買を承継取得の例とした資料の意図

資料が贈与・売買を承継取得の例として挙げているのは、即時取得が成立しない場合を想定しているためです。即時取得の要件である「善意」「無過失」が欠けていれば、所有権の欠陥がそのまま残り、承継取得として扱われます。つまり、贈与や売買は、即時取得が成立するかどうかによって、承継取得にも原始取得にもなり得るのです。

実務的なアドバイス:即時取得の成立要件を確認する重要性

動産取引において、即時取得を主張するには、「善意」「無過失」の要件を満たしていることを証明する必要があります。そのため、取引相手や目的物の履歴を十分に調査し、リスクを最小限に抑えることが重要です。

専門家に相談すべき場合

複雑な取引や、高額な動産取引の場合、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。専門家は、取引の法的リスクを的確に評価し、適切なアドバイスを提供してくれます。

まとめ:即時取得の理解

即時取得は、善意・無過失の取得者を保護する重要な制度です。一見承継取得のように見えますが、法律上は原始取得とみなされ、所有権の欠陥を消滅させ、新たな所有権を発生させます。贈与や売買は、即時取得の成立要件を満たすかどうかによって、承継取得にも原始取得にもなり得ることを理解することが重要です。 取引の際には、善意・無過失であることを確認し、必要に応じて専門家の意見を求めましょう。

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