テーマの基礎知識:現状有姿渡しとは
土地や建物の売買において、「現状有姿(げんじょうゆうし)渡し」という言葉が使われることがあります。これは、売主が、契約時の状態のまま物件を買主に引き渡すという意味です。
つまり、特別な取り決めがない限り、売主は物件の状態を現状のままで引き渡す義務を負い、買主はそれを承諾するということです。
この「現状」とは、契約が成立した時点での状態を指します。
例えば、土地に建物が建っている場合、その建物がある状態で引き渡されるのが基本です。
ただし、契約書に特別な取り決めがあれば、その内容が優先されます。
現状有姿渡しは、売主と買主の間の責任範囲を明確にするために用いられます。
売主は、契約時に存在した状態について、原則として責任を負いません。
一方、買主は、現状の状態を受け入れることになります。
このため、買主は事前に物件の状態をしっかりと確認し、問題がないか慎重に判断する必要があります。
今回のケースへの直接的な回答
今回のケースでは、契約書に「現状有姿のまま」と記載されているため、原則として、土地は契約時の状態のままで引き渡されることになります。
しかし、不動産屋が求めている「家庭菜園の野菜、柚子や柿の木、放置廃車の撤去」については、契約内容と個別の事情によって判断が異なります。
まず、契約書に撤去に関する具体的な取り決めがないか確認しましょう。
もし、当初の約束通り、不動産屋が撤去することになっていたのであれば、その約束が契約書に明記されていないとしても、交渉の余地があるかもしれません。
ただし、口約束だけの場合、それを証明するのは難しい場合があります。
次に、撤去を求められているものが、土地の「瑕疵」にあたるかどうかを検討する必要があります。
「瑕疵」とは、通常備わっているべき機能や品質を欠いている状態を指します。
樹木があることが、土地の利用を妨げるような「瑕疵」にあたるかどうかは、その樹木の種類や状態、土地の利用目的などによって判断が分かれます。
一般的には、樹木があること自体が直ちに「瑕疵」と判断されるわけではありません。
放置廃車については、土地の利用を妨げる可能性があり、撤去が必要と判断される可能性が高いと考えられます。
ただし、すでに廃車手続きが済んでいるのであれば、買主が利用することを妨げるものではないため、必ずしも撤去する必要がない場合もあります。
関係する法律や制度:契約自由の原則と瑕疵担保責任
土地売買においては、民法の「契約自由の原則」が適用されます。
これは、当事者が自由に契約内容を決定できるという原則です。
ただし、契約内容が公序良俗(社会の秩序や善良な風俗)に反する場合は無効となります。
また、売主の「瑕疵担保責任」も重要なポイントです。
瑕疵担保責任とは、売買の目的物に隠れた瑕疵があった場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。
以前は、民法で瑕疵担保責任が定められていましたが、現在は「契約不適合責任」という新しい制度に変わっています。
契約不適合責任では、売主は、契約の内容に適合しない目的物を引き渡した場合に、買主に対して修補(修理)、代替物の引き渡し、代金減額、損害賠償などの責任を負います。
ただし、現状有姿渡しの場合、売主は、契約時の状態について責任を負わないことが一般的です。
誤解されがちなポイントの整理:現状有姿=何でもあり?
現状有姿渡しは、売主が一切の責任を負わないという意味ではありません。
契約内容によっては、売主が責任を負う場合もあります。
よくある誤解として、現状有姿渡しであれば、土地に問題があっても、売主は一切責任を負わないと考えることです。
しかし、売主が故意に隠していた瑕疵や、契約内容に違反する状態がある場合は、売主が責任を負う可能性があります。
また、現状有姿渡しであっても、売主は、契約時に説明した内容と異なる状態の土地を引き渡すことはできません。
例えば、契約時に「更地(建物がない土地)」と説明していたのに、実際には建物が建っていた場合、売主は責任を負う可能性があります。
さらに、契約書に「現状有姿」と記載されていても、売主と買主の間で、撤去に関する特別な取り決めがある場合は、その取り決めが優先されます。
例えば、売主が「樹木は撤去する」と約束していた場合、現状有姿渡しであっても、売主は撤去する義務を負います。
実務的なアドバイスや具体例の紹介:契約書を読み解く
土地売買におけるトラブルを避けるためには、契約書をしっかりと確認することが重要です。
特に、以下の点に注意しましょう。
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現状有姿に関する条項:
現状有姿の範囲や、売主が責任を負う範囲について、具体的に記載されているか確認しましょう。 -
撤去に関する条項:
撤去が必要なもの、撤去の責任者、撤去費用について、明確に記載されているか確認しましょう。 -
瑕疵担保責任(契約不適合責任)に関する条項:
売主の責任範囲や、責任を追及できる期間について、確認しましょう。 -
特約事項:
口約束の内容が、契約書に明記されているか確認しましょう。
契約書に不明な点がある場合は、必ず専門家(弁護士や不動産鑑定士など)に相談しましょう。
契約前に疑問点を解消しておくことで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
具体例として、ある土地に古家が建っており、現状有姿渡しで売買契約が締結されたケースを考えてみましょう。
この場合、売主は、古家が建っている状態で土地を引き渡すのが原則です。
しかし、契約書に「売主は、引き渡し前に古家を解体し、更地にして引き渡す」という特約があれば、売主は解体する義務を負います。
専門家に相談すべき場合とその理由
今回のケースのように、契約内容について判断が難しい場合や、相手方との間で意見の相違がある場合は、専門家に相談することをお勧めします。
相談すべき専門家としては、以下の人が挙げられます。
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弁護士:
契約内容の解釈や、法的責任についてアドバイスをもらえます。
相手方との交渉を代理してもらうことも可能です。 -
不動産鑑定士:
土地の価値や、瑕疵の有無について、専門的な見地から評価してもらえます。 -
宅地建物取引士:
不動産取引に関する専門知識を持っています。
契約内容や、取引の流れについて相談できます。
専門家に相談することで、
- 法的なリスクを回避できる
- 適切な対応策を立てられる
- 相手方との交渉を有利に進められる
といったメリットがあります。
特に、相手方との間でトラブルが発生している場合は、早期に専門家に相談することが重要です。
まとめ:今回の重要ポイントのおさらい
今回の質問の重要ポイントをまとめます。
- 現状有姿渡しとは、契約時の状態のまま物件を引き渡すこと。
- 契約内容によっては、売主が撤去義務を負う場合がある。
- 樹木があることが、直ちに「瑕疵」と判断されるわけではない。
- 契約書をしっかりと確認し、不明な点は専門家に相談する。
今回のケースでは、契約書の内容をよく確認し、不動産屋との間で撤去義務について話し合う必要があります。
必要に応じて、弁護士などの専門家に相談し、適切な対応策を検討しましょう。

