測量会社と土地家屋調査士事務所:それぞれの役割
土地家屋調査士(以下、調査士)の業務は、土地や建物の正確な情報を明らかにし、登記(不動産の権利関係を公的に記録すること)に不可欠な書類を作成することです。一方、測量会社は、主に測量技術を用いて土地の形状や面積を測る業務を行います。両者は密接な関係にあり、連携して業務を行うことも少なくありません。
調査士が測量会社を経営する場合、その目的は多岐にわたります。主なものとしては、
- 業務の効率化: 測量と登記をワンストップで提供することで、顧客の利便性を高め、業務をスムーズに進めることができます。
- 事業規模の拡大: 測量会社を設立することで、より大規模な案件や公共事業への参入が可能になります。
- リスク分散: 測量会社と調査士事務所をそれぞれ運営することで、リスクを分散し、経営の安定化を図ることができます。
ただし、測量会社と調査士事務所は、それぞれ異なる法的規制や倫理的な制約を受けるため、両者を適切に使い分ける必要があります。
公共事業と民間案件での使い分け:その理由
公共事業の場合、測量会社が主体となり、調査士が協力するという形態をとることがあります。これは、公共事業の多くが大規模な測量を必要とし、測量会社が持つ測量技術や機材が有効に活用されるためです。また、公共事業は、入札(競争入札)によって受注することが多く、測量会社として組織的に対応することで、より多くの案件を獲得できる可能性があります。
一方、民間からの依頼の場合、調査士事務所が主体となることが多いです。これは、土地や建物の権利関係に関する調査や登記申請は、調査士の専門分野であり、顧客との直接的なコミュニケーションを通じて、きめ細やかなサービスを提供する必要があるためです。
非調査士との連携禁止について
調査士法では、調査士が非調査士(調査士の資格を持たない人)と連携して業務を行うことを原則として禁止しています(非調査士との連携の禁止)。これは、専門家としての責任を明確にし、質の高いサービスを提供するためです。
しかし、測量会社が作成した測量図を調査士が登記に利用することは、必ずしも非調査士との連携に該当するわけではありません。測量図は、あくまで登記に必要な情報を得るための資料であり、最終的な判断は調査士が行います。ただし、測量図の精度や信頼性については、調査士が責任を持って確認する必要があります。
公共団体からの用地測量で測量図を作成し納品する行為についても、非調査士との連携に該当するかどうかは、個別のケースによって判断が異なります。測量会社が単に測量業務を行うだけであれば、問題ありません。しかし、測量会社が登記申請に必要な書類を作成したり、権利関係に関するアドバイスを行う場合は、非調査士との連携とみなされる可能性があります。
登録調査士が測量会社に勤務する場合の注意点
登録調査士が測量会社に勤務する場合、測量業務だけでなく、登記に関する業務を行うことも可能です。ただし、以下の点に注意する必要があります。
- 調査士としての責任: 測量会社に勤務していても、調査士としての責任は変わりません。業務の質を確保し、顧客の利益を最優先に考える必要があります。
- 利益相反の回避: 測量会社と顧客との間で利益相反が生じる可能性がある場合は、事前に顧客に説明し、適切な対応をとる必要があります。
- 情報管理: 顧客の個人情報や業務に関する情報を適切に管理し、漏洩(ろうえい)しないように注意する必要があります。
また、測量会社に勤務する調査士は、所属する調査士会や、場合によっては勤務先の測量会社から、倫理規定や服務規程(会社で働く上でのルール)を遵守(じゅんしゅ)することが求められます。
関連する法律や制度について
土地家屋調査士に関連する主な法律は以下のとおりです。
- 土地家屋調査士法: 土地家屋調査士の資格、業務、義務などを定めています。
- 不動産登記法: 不動産の権利関係を登記する際のルールを定めています。
測量会社に関連する法律としては、
- 測量法: 測量の精度や測量業者の登録などを定めています。
これらの法律に基づいて、土地家屋調査士や測量会社は業務を行っています。
誤解されやすいポイントの整理
土地家屋調査士と測量会社に関する誤解として、以下のようなものがあります。
- 測量会社は登記業務を行えない: 測量会社は、登記申請を行うことはできません。ただし、測量図の作成など、登記に必要な情報を提供する業務は行うことができます。
- 調査士は測量業務を行えない: 調査士は、測量業務を行うことができます。ただし、測量会社のように大規模な測量を行うための設備や人員を持っているとは限りません。
- 公共事業は必ず測量会社が受注する: 公共事業は、測量会社だけでなく、調査士事務所も受注することができます。ただし、大規模な案件では、測量会社が有利になる傾向があります。
これらの誤解を解くことで、土地家屋調査士と測量会社の役割分担をより深く理解することができます。
実務的なアドバイスと具体例
土地家屋調査士として、測量会社と連携する場合、以下の点に注意すると良いでしょう。
- 測量会社の選定: 測量会社の技術力や実績、信頼性を確認し、適切な会社を選定することが重要です。
- 業務分担の明確化: 測量業務と登記業務の範囲を明確にし、責任の所在を明確にしておくことが、トラブルを避けるために重要です。
- 情報共有の徹底: 測量結果や顧客情報などを、測量会社と共有し、連携を密にすることで、より質の高いサービスを提供できます。
具体例として、ある土地の売買を行う際に、土地の境界が不明確であったとします。調査士は、測量会社に依頼して境界測量を行い、その結果に基づいて境界標を設置し、登記申請を行うことで、売買をスムーズに進めることができます。この場合、調査士と測量会社が連携することで、顧客は安心して取引を行うことができます。
専門家に相談すべき場合とその理由
以下のような場合は、専門家(弁護士、土地家屋調査士など)に相談することをお勧めします。
- 非調査士との連携に関する疑問がある場合: 土地家屋調査士法に違反する行為を行ってしまうリスクを避けるため。
- 測量会社との業務分担でトラブルが発生した場合: 専門的な知識と経験に基づいて、適切な解決策を提案してもらうため。
- 懲戒処分に関する不安がある場合: 弁護士に相談することで、今後の対応についてアドバイスを受けることができます。
専門家は、法律や専門知識に基づいて、適切なアドバイスやサポートを提供してくれます。
まとめ:今回の重要ポイントのおさらい
土地家屋調査士が測量会社と個人事務所を使い分ける理由は、業務の効率化、事業規模の拡大、リスク分散など、多岐にわたります。公共事業と民間案件では、それぞれ異なる形態で業務が行われることが多く、非調査士との連携には注意が必要です。
登録調査士が測量会社に勤務する場合は、調査士としての責任を果たし、利益相反を回避し、情報管理を徹底する必要があります。
土地家屋調査士と測量会社の関係を理解し、適切な連携を行うことで、より質の高いサービスを提供し、顧客の信頼を得ることができます。

