テーマの基礎知識:所有権と越境

土地や建物などの「所有権」(しょうゆうけん)とは、その物を自由に使える権利のことです。例えば、自分の土地であれば、そこで家を建てたり、木を植えたり、自由に利用できます。

しかし、自分の土地といえども、隣の土地や建物に影響を及ぼすような行為は制限されることがあります。
今回のケースのように、隣の土地にある木の枝が自分の土地に伸びてくる場合、これは「越境」(えっきょう)と呼ばれる状態になります。

民法では、このような越境について、いくつかの規定を設けています。

今回のケースへの直接的な回答:神社の木の枝への対応

今回のケースでは、隣接する神社の木の枝があなたの土地に越境しているため、法的にいくつかの対応が考えられます。

まず、神社に対して、枝の「切除」(せつじょ)を求めることができます。
これは、越境している枝を切り、あなたの土地への影響をなくすよう求めることです。
ただし、場合によっては、切除費用を負担する必要があるかもしれません。

次に、枝の「除去」(じょきょ)を求めることも可能です。
これは、枝を切るだけでなく、その枝が原因で発生する損害(例えば、日照不足や、落ち葉による清掃の手間など)の賠償を求めることです。

売却価格の減額を迫られているとのことですが、まずは、神社と話し合い、枝の対応について合意を目指しましょう。
その上で、買い手との減額交渉に臨むことが望ましいでしょう。

関係する法律や制度:民法と不動産売買

今回のケースで関係する主な法律は、民法です。
民法は、私的な関係を規律する基本的な法律であり、所有権や越境に関する規定も含まれています。

  • 民法209条(竹木の枝の切除及び根の切取り):
    隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができます。
    ただし、その竹木の所有者に損害がないときは、自ら切除することができます。
  • 民法709条(不法行為による損害賠償):
    故意または過失によって他人の権利を侵害した者は、その損害を賠償する責任を負います。
    枝の越境によって損害が発生した場合、神社側に損害賠償を請求できる可能性があります。

不動産売買においては、契約内容が重要になります。
売買契約書には、土地の現状や瑕疵(かし、欠陥のこと)について記載されることが一般的です。
今回のケースのように、枝の越境が売買価格に影響を与える可能性がある場合、契約書にその旨を明記しておくことが重要です。

誤解されがちなポイントの整理:越境と所有者の責任

よくある誤解として、越境している木の枝は、常にその土地の所有者が勝手に切除できるというものがあります。
民法では、越境している枝の切除を求める権利は認められていますが、場合によっては、事前に所有者に通知したり、切除費用を負担したりする必要がある場合があります。

また、越境している枝が原因で損害が発生した場合、その損害賠償を求めるためには、越境した側の過失(落ち度)を証明する必要がある場合があります。
例えば、枝が自然に落ちたのではなく、神社の管理に問題があった(手入れを怠っていたなど)ことを証明できれば、損害賠償請求が認められやすくなります。

実務的なアドバイスや具体例の紹介:交渉と証拠の準備

まずは、神社との話し合いを始めましょう。
可能であれば、書面で「枝の切除」または「対応」を求める通知を送付し、記録を残しておくことが重要です。
内容証明郵便を利用すると、送付した事実と内容を証明できます。

話し合いがうまくいかない場合は、弁護士などの専門家に相談することを検討しましょう。
専門家は、法的なアドバイスや、交渉の代行をしてくれます。

減額交渉においては、枝の越境が土地の価値にどの程度影響を与えるのか、客観的な証拠を準備することが重要です。
例えば、不動産鑑定士に依頼して、越境による土地の価値の下落を評価してもらうことも有効です。

また、買い手との交渉では、枝の越境が原因で売却価格が減額される場合、その減額分の根拠を明確に示してもらいましょう。
その上で、神社との交渉状況や、法的な対応の見通しなどを説明し、合意形成を目指しましょう。

専門家に相談すべき場合とその理由:弁護士と不動産鑑定士

以下のような場合は、専門家への相談を検討しましょう。

  • 神社との交渉がうまくいかない場合:
    弁護士に相談し、法的なアドバイスや交渉の代行を依頼することで、円滑な解決を目指すことができます。
  • 損害賠償請求を検討する場合:
    弁護士に相談し、損害賠償請求の手続きや、必要な証拠についてアドバイスを受けることができます。
  • 土地の価値の下落を正確に評価したい場合:
    不動産鑑定士に依頼し、越境による土地の価値の下落を評価してもらうことで、減額交渉の根拠を明確にすることができます。

専門家への相談費用はかかりますが、適切なアドバイスを受けることで、より有利な条件で問題を解決できる可能性があります。

まとめ:今回の重要ポイントのおさらい

  • 隣接する神社の木の枝の越境は、所有権侵害の可能性があります。
  • 神社に対して、枝の切除や、損害賠償を求めることができます。
  • まずは、神社と話し合い、対応について合意を目指しましょう。
  • 減額交渉では、客観的な証拠を準備し、買い手との合意形成を目指しましょう。
  • 問題が解決しない場合は、弁護士や不動産鑑定士などの専門家に相談しましょう。