テーマの基礎知識(定義や前提の説明)
建物の明渡訴訟とは、建物の所有者や賃借人が、不法占拠者(不法に建物を使用している人)に対して、建物を明け渡すように求める裁判のことです。
今回のケースでは、建物が家族5人の共有名義になっていることが重要です。「共有名義」とは、一つの建物を複数の人が共同で所有している状態を指します。それぞれの人が持っている権利の割合を「持分」(もちぶん)と言います。今回のケースでは、各人が1/5の持分を持っていることになります。
民法では、共有物(今回の場合は建物)の管理について、共有者全員の同意が必要な場合と、持分の過半数の同意で足りる場合があります。明渡訴訟は、共有物の管理に関する行為にあたります。
今回のケースへの直接的な回答
原則として、共有名義の建物の明渡訴訟を起こすには、共有者全員が原告として訴訟に参加する必要があります。これは、共有物全体の権利を守るためです。
しかし、例外もあります。例えば、建物を不法占拠している相手が、共有者の1人に対してのみ不法行為を行った場合など、一部の共有者だけで訴訟を起こせる可能性があります。
ただし、この場合でも、他の共有者の同意を得ておくことが望ましいです。
今回のケースでは、共有者全員が1/5の持分を持っていること、また、固定資産評価証明書に全員の名前が記載されていることから、共有者全員が建物の権利に関わっていると考えられます。
そのため、基本的には、共有者全員が原告として訴訟に参加することが望ましいです。
もし、一部の共有者だけで訴訟を起こす場合は、他の共有者の同意を得るか、訴訟に参加してもらうことが重要です。同意が得られない場合は、訴訟の進行に影響が出る可能性があります。
関係する法律や制度がある場合は明記
今回のケースで関係する主な法律は、民法です。特に、共有に関する規定(民法249条~)が重要になります。
民法249条では、各共有者は、共有物全部について、その持分に応じて使用することができると定められています。つまり、共有者は、自分の持分に応じて建物を使用する権利を持っています。
また、民法251条では、共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決すると定められています。明渡訴訟は、共有物の管理に関する行為にあたるため、原則として、共有者の過半数の同意が必要となります。
さらに、民法256条では、共有者は、いつでも共有物の分割を請求できると定められています。共有関係を解消する方法の一つとして、共有物の分割があります。今回のケースでは、明渡訴訟と合わせて、共有物の分割について検討することも可能です。
誤解されがちなポイントの整理
よくある誤解として、「持分の割合が大きい人が、単独で訴訟を起こせる」というものがあります。しかし、共有物の管理に関する行為は、原則として共有者全員の合意または過半数の合意が必要です。
また、「一部の共有者が訴訟に勝てば、他の共有者も自動的に権利が回復する」という誤解もあります。しかし、訴訟の結果は、訴訟に参加した原告にのみ影響します。他の共有者の権利は、別途手続きが必要になる場合があります。
さらに、「固定資産評価証明書に名前が載っている人が、当然に訴訟を起こせる」という誤解もあります。固定資産評価証明書は、固定資産税の課税対象を明らかにするものであり、訴訟を起こす権利を直接的に示すものではありません。訴訟を起こすには、建物の共有持分を持っていることが前提となります。
実務的なアドバイスや具体例の紹介
今回のケースでは、まず、他の共有者と話し合い、全員で訴訟を起こす方向で調整することが望ましいです。全員が原告となれば、訴訟がスムーズに進みやすくなります。
もし、他の共有者の協力を得られない場合は、弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は、個別の事情に応じて、最適な訴訟戦略を提案してくれます。例えば、他の共有者の同意を得るための交渉を代行したり、一部の共有者だけで訴訟を起こす場合の法的根拠を検討したりすることができます。
具体例として、AさんとBさんが共有名義の建物を、Cさんが不法占拠しているとします。AさんとBさんが、Cさんに対して明渡訴訟を起こす場合、Aさんが単独で訴訟を起こすことは難しいですが、Bさんの同意を得て、共同で訴訟を起こすことは可能です。
もし、Bさんが同意しない場合でも、Aさんは、自分の持分に基づいて、Cさんに対して建物の使用を妨害しないように求める訴訟を起こすことができる場合があります。
本人訴訟の場合、訴状の作成や証拠の収集など、様々な手続きを自分で行う必要があります。法律の知識がないと、不利な状況になる可能性があります。弁護士に依頼すれば、これらの手続きをスムーズに進めることができます。
専門家に相談すべき場合とその理由
今回のケースでは、以下の場合は専門家(弁護士)に相談することをお勧めします。
- 他の共有者との間で意見の対立があり、話し合いがまとまらない場合
- 訴訟に関する法的知識がなく、手続きに不安がある場合
- 不法占拠者が、建物の明け渡しに応じない場合
- 訴訟が長期化する可能性がある場合
弁護士に相談することで、法的アドバイスを受け、適切な対応をとることができます。また、弁護士は、訴訟の代理人として、訴訟手続きを代行してくれます。これにより、ご自身の手間を省き、訴訟を有利に進めることができます。
まとめ(今回の重要ポイントのおさらい)
今回の質問のポイントをまとめます。
- 共有名義の建物の明渡訴訟では、原則として共有者全員が原告になる必要があります。
- 一部の共有者だけで訴訟を起こすことも可能ですが、他の共有者の同意を得るか、訴訟に参加してもらうことが重要です。
- 共有者の過半数の同意があれば、訴訟を起こすことができます。
- 本人訴訟の場合、法的知識がないと不利になる可能性があります。
- 他の共有者との関係性や、訴訟の複雑さによっては、弁護士に相談することをお勧めします。
建物の明渡訴訟は、複雑な法的問題を含む場合があります。ご自身の状況に合わせて、適切な対応をとることが重要です。

