検察審査会と決議の基礎知識
検察審査会について、まずはその役割と決議について理解を深めましょう。
検察審査会は、国民の中から選ばれた審査員(11人)によって構成され、検察官(けんさつかん)が「不起訴」(ふきそ)とした事件について、その判断が適切だったかを審査する機関です。検察官が事件を起訴しない、つまり裁判にしないと決めた場合に、その判断が本当に正しかったのかをチェックする役割を担っています。これは、国民の視点から検察の判断をチェックし、司法の公正さを保つための重要な仕組みです。
検察審査会は、審査の結果として、以下のいずれかの議決を行います。
- 不起訴相当:検察官の不起訴の判断は適切である。
- 不起訴不当:検察官の不起訴の判断は不当である。検察官は再度捜査を行うか、起訴を検討すべき。
- 起訴相当:検察官は事件を起訴すべきである。
「不起訴不当」や「起訴相当」の議決が出た場合、検察官はその判断を尊重し、再捜査や起訴を検討することになります。ただし、検察審査会の議決には法的拘束力はなく、必ずしもその通りにしなければならないわけではありません。
今回のケースへの直接的な回答
検察審査会が、根拠なく「不起訴不当」や「起訴相当」の決議をした場合、直ちに「職権濫用罪」や「公務執行妨害罪」が成立するわけではありません。これらの罪が成立するには、いくつかの厳しい条件を満たす必要があります。
職権濫用罪(しょっけんらんようざい)が成立するためには、検察審査会の審査員が、その職務上の権限を逸脱(いつだつ)し、不正な目的で決議を行ったという事実が必要です。例えば、個人的な恨みや利益のために、意図的に不当な決議を行った場合などが考えられます。しかし、検察審査会の審査員は、法律の専門家ではないため、法律解釈の誤りや、証拠の評価に対する意見の相違などによって、誤った判断をしてしまう可能性はあります。しかし、それだけで職権濫用罪が成立することはありません。
公務執行妨害罪(こうむしっこうぼうがいざい)が成立するためには、検察審査会の決議が、特定の国会議員の職務遂行を妨害する目的で行われたという事実が必要です。例えば、国会議員の政治活動を妨害するために、検察審査会が虚偽の情報を基に「起訴相当」の決議を行った場合などが考えられます。しかし、これも、検察審査会の審査員が、そのような意図を持っていたことを証明することが非常に難しいでしょう。また、検察審査会の決議自体には、直接的に国会議員の活動を妨害する効果はありません。
関係する法律や制度
今回のケースで関係する可能性のある法律や制度について解説します。
まず、検察審査会法(けんさいしんさかいほう)が関係します。この法律は、検察審査会の設置、構成、権限などを定めています。検察審査会の審査員は、この法律に基づいて職務を遂行します。
次に、刑法(けいほう)が関係します。職権濫用罪や公務執行妨害罪は、刑法に規定されている犯罪です。これらの罪が成立するかどうかは、刑法の規定に基づいて判断されます。
また、刑事訴訟法(けいじそしょうほう)も関係します。刑事訴訟法は、刑事事件の手続きを定めています。検察審査会の審査や、検察官の捜査、裁判所の審理など、刑事事件に関する様々な手続きは、この法律に基づいて行われます。
誤解されがちなポイントの整理
検察審査会の決議に関する誤解しやすいポイントを整理します。
誤解1:検察審査会の決議は絶対的なもの
検察審査会の決議には、法的拘束力はありません。検察官は、検察審査会の議決を尊重しますが、必ずしもその通りにしなければならないわけではありません。最終的な判断は、検察官自身が行います。
誤解2:検察審査会の審査員は法律の専門家である
検察審査会の審査員は、国民の中から選ばれた一般の人々です。法律の専門家ではありません。そのため、法律解釈や証拠の評価について、専門家とは異なる見解を持つこともあります。
誤解3:検察審査会の決議は即時的な影響力を持つ
検察審査会の決議は、直ちに個人の権利や国会議員の活動に影響を与えるものではありません。「不起訴不当」や「起訴相当」の議決が出たとしても、検察官が再捜査や起訴を検討するだけであり、最終的な判断は検察官が行います。
実務的なアドバイスや具体例の紹介
検察審査会の決議に関する実務的なアドバイスや具体例を紹介します。
事例1:検察審査会の審査における意見の相違
検察審査会では、審査員の意見が分かれることがあります。例えば、ある事件について、証拠の評価や法律解釈に対する意見が異なり、最終的に「不起訴相当」と「不起訴不当」に意見が割れることがあります。このような場合、検察審査会は、多数決で議決を決定します。しかし、少数意見も、検察官に伝えられ、その後の判断に影響を与える可能性があります。
事例2:検察審査会の決議と再捜査
検察審査会が「不起訴不当」の議決をした場合、検察官は、再度捜査を行うことがあります。この再捜査の結果、新たな証拠が見つかったり、新たな事実が判明したりすることもあります。その結果、検察官が起訴に踏み切ることもあります。
事例3:検察審査会の決議と起訴
検察審査会が「起訴相当」の議決をした場合、検察官は、起訴を検討します。しかし、検察官は、検察審査会の議決に拘束されるわけではありません。検察官は、最終的に起訴するかどうかを、自らの判断で決定します。起訴するかしないかは、事件の性質、証拠の状況、社会的な影響などを総合的に考慮して判断されます。
専門家に相談すべき場合とその理由
検察審査会の決議や、それに関連する問題について、専門家に相談すべき場合について解説します。
弁護士(べんごし)への相談
検察審査会の審査の結果に不服がある場合、弁護士に相談することができます。弁護士は、法律の専門家として、検察審査会の審査の問題点や、その後の対応について、アドバイスをしてくれます。また、弁護士は、検察官との交渉や、裁判の手続きを代理で行うこともできます。
検察審査会事務局(けんさつしんさかいじむきょく)への相談
検察審査会の審査に関する手続きや、疑問点について、検察審査会事務局に問い合わせることができます。事務局は、検察審査会の運営をサポートする機関であり、審査に関する情報を提供してくれます。
その他
検察審査会の決議が、個人の権利や名誉を侵害していると感じる場合、人権擁護団体や、メディアに相談することもできます。
まとめ(今回の重要ポイントのおさらい)
今回の質問の重要ポイントをまとめます。
- 検察審査会の決議が、直ちに職権濫用罪や公務執行妨害罪になるわけではありません。
- 職権濫用罪が成立するには、検察審査会の審査員が、不正な目的で職務上の権限を逸脱したという事実が必要です。
- 公務執行妨害罪が成立するには、検察審査会の決議が、特定の国会議員の職務遂行を妨害する目的で行われたという事実が必要です。
- 検察審査会の決議には法的拘束力はなく、最終的な判断は検察官が行います。
- 検察審査会の審査や、それに関連する問題について、弁護士や検察審査会事務局に相談することができます。

