特許権の譲渡と相続:特許出願の行方と権利を守る方法を解説
【背景】
- 特許法の勉強を始めたばかりの質問者です。
- 発明に関する特許を受ける権利が譲渡された後に、発明者が死亡し、相続人が特許出願を行ったケースについて疑問を持っています。
- 譲渡を受けた人も特許出願を行い、どちらの出願がどうなるのか知りたいと考えています。
【悩み】
- 特許出願AとBの今後の展開(帰趨)が理解できません。
- 権利を譲り受けた丙が確実に特許権を取得するために、どのような対策を取れば良いのか分かりません。
- 問題文の条件(特許庁からの通知がない、他の事情は考慮しない)の中で、どこまでを考慮すれば良いのか迷っています。
特許出願Aは、相続人に特許を受ける権利がある限り、拒絶理由がなければ特許権を取得できます。丙は、乙から特許を受ける権利を譲り受ける交渉をし、名義変更を行うのが最良です。
特許権って何?基本のキ!
特許権とは、発明をした人(またはその権利を受け継いだ人)に与えられる、その発明を独占的に利用できる権利のことです。具体的には、特許権を持つ人は、その発明を自分で作ったり、売ったり、使ったりすることができます。他の人は、特許権者の許可なく勝手にその発明を使うことはできません。
特許を受けるためには、特許庁に「特許出願」をする必要があります。特許庁は、出願された発明が特許の要件(後述)を満たしているかを審査し、要件を満たしていれば特許が与えられます。特許が認められると、特許権が発生し、権利者はその発明を独占的に利用できるようになります。
今回のケースでは、発明イについて、甲から丙へ「特許を受ける権利」が譲渡された後、甲が亡くなり、相続人である乙が特許出願Aを行い、さらに丙も特許出願Bを行ったという状況です。
特許出願AとB、それぞれの運命は?
特許出願AとBの行方を理解するためには、特許法におけるいくつかの重要なルールを知っておく必要があります。
- 特許を受ける権利の承継(しょうけい):発明者は、自分の発明について特許を受ける権利を持っています。この権利は、譲渡したり、相続したりすることができます。今回のケースでは、甲から丙へ権利が譲渡され、甲の相続人である乙が権利を相続したという状況です。
- 先願主義(せんがんしゅぎ):同じ発明について複数の人が特許出願をした場合、原則として、最初に出願した人に特許が与えられます(特許法第39条)。
- 出願公開:特許出願の内容は、原則として出願から1年6ヶ月後に公開されます。これにより、他の人がその発明について知ることができ、研究開発に役立てたり、特許の有効性について意見を述べたりすることができます。
今回のケースでは、甲から丙へ特許を受ける権利が譲渡された後、甲が亡くなり、相続人である乙が特許出願Aを行いました。その後、丙が特許出願Bを行っています。
まず、乙の特許出願Aについて考えてみましょう。乙は甲の相続人であり、甲から特許を受ける権利を相続しています。そのため、乙は特許出願Aを行うことができます。ただし、特許出願Aが特許されるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。例えば、その発明が新規性(今まで世の中に存在しなかった発明であること)や進歩性(これまでの技術から容易に思いつかない発明であること)を持っていることなどです。
次に、丙の特許出願Bについてです。丙は、甲から特許を受ける権利を譲り受けています。しかし、特許法では、特許出願よりも前に権利が譲渡されたことを、第三者に対抗するためには、特許庁への登録が必要とされています(特許法第34条)。今回のケースでは、特許庁への登録が行われていない可能性があります。そのため、原則として、乙の方が優先される可能性があります。
ただし、特許出願AとBのどちらが特許されるかは、他の様々な要素も考慮して判断されます。例えば、特許出願Aに拒絶理由(特許にならない理由)がある場合、特許出願Bが特許される可能性もあります。また、特許出願Bが特許出願Aの出願公開前にされた場合、特許法第29条の2(拡大された先願)による拒絶理由はありません。
特許権を取得するための丙の最善策
丙が確実に特許権を取得するためには、いくつかの対策を講じることができます。
- 乙との交渉:最も確実な方法は、乙から特許を受ける権利を譲り受けることです。乙と交渉し、特許出願Aに係る特許を受ける権利を譲り受ける契約を締結します。
- 出願人名義変更:乙から権利を譲り受けた場合、特許庁長官に対して「出願人名義変更届」を提出します。これにより、特許出願Aの出願人が乙から丙に変更され、丙が特許権を取得する可能性が高まります。
- 拒絶理由の確認:特許出願Aに拒絶理由がないか、慎重に検討します。拒絶理由とは、その発明が特許として認められない理由のことです。例えば、その発明が新規性や進歩性を欠いている場合、拒絶理由となります。もし、特許出願Aに拒絶理由がある場合、特許出願Bが特許される可能性が高まります。
今回のケースでは、特許出願AとBのどちらが特許されるか、現時点では断定できません。しかし、丙としては、乙との交渉による権利の取得を目指し、その上で拒絶理由の有無を検討することが、最も現実的な対策と言えるでしょう。
特許に関する法律と制度のあれこれ
特許に関する制度は、非常に複雑です。今回のケースに関連する法律や制度をいくつかご紹介します。
- 特許法:特許に関する基本的なルールを定めた法律です。特許を受けるための条件、特許権の内容、特許権侵害に対する救済などについて規定しています。
- 特許を受ける権利:発明をした人が持つ、特許を受けることができる権利のことです。この権利は、譲渡したり、相続したりすることができます。
- 特許出願:特許権を取得するために、特許庁に対して行う手続きのことです。特許出願には、発明の詳細な説明(明細書)や、特許を受けたい範囲(特許請求の範囲)などを記載した書類を提出する必要があります。
- 出願審査:特許庁が、特許出願された発明が特許の要件を満たしているかを審査することです。審査の結果、特許が認められると、特許権が発生します。
- 先願主義:同じ発明について複数の人が特許出願した場合、原則として、最初に出願した人に特許が与えられるという原則です。
- 特許庁への登録:特許を受ける権利の譲渡や、特許権の移転などを、第三者に対抗するためには、特許庁への登録が必要です。
よくある誤解を解き明かす!
特許に関する情報の中には、誤解されやすいポイントがいくつかあります。以下に、よくある誤解とその解説をまとめます。
- 誤解:特許出願をすれば、必ず特許権を取得できる。
- 解説:特許出願をしても、審査の結果、特許の要件を満たさないと判断されれば、特許権を取得することはできません。
- 誤解:特許権は、永久に有効である。
- 解説:特許権の存続期間は、原則として、出願日から20年です。存続期間が過ぎると、特許権は消滅し、誰でもその発明を利用できるようになります。
- 誤解:特許権を取得すれば、どんな発明でも自由に実施できる。
- 解説:特許権は、その発明を独占的に利用できる権利ですが、他の特許権を侵害するような利用はできません。例えば、ある製品を作るために、Aという特許とBという特許の両方が必要な場合、Aの特許権者から許可を得ないと、Bの特許権を持っていてもその製品を作ることはできません。
実務で役立つアドバイス
特許に関する実務的なアドバイスをいくつかご紹介します。
- 弁理士への相談:特許に関する手続きは複雑であり、専門的な知識が必要です。特許出願や権利の取得を検討する際には、弁理士に相談することをお勧めします。
- 情報収集:特許に関する情報は、特許庁のウェブサイトや、特許情報プラットフォームなどで公開されています。積極的に情報を収集し、最新の動向を把握することが重要です。
- 権利侵害への対応:自分の特許権が侵害された場合、弁理士や弁護士に相談し、適切な対応をとることが重要です。
こんな時は専門家に相談を!
特許に関する問題は、専門的な知識が必要となる場合が多くあります。以下のような状況に直面した場合は、専門家である弁理士に相談することをお勧めします。
- 特許出願を検討している。
- 特許権を取得したいが、手続きが分からない。
- 特許権が侵害されている可能性がある。
- 他社の特許権を侵害している可能性がある。
- 特許に関する契約(譲渡、ライセンスなど)を締結したい。
弁理士は、特許に関する専門家であり、特許出願の手続き、権利侵害への対応、契約に関するアドバイスなど、様々なサポートを提供してくれます。
まとめ:今回の重要ポイント!
今回のケースの重要ポイントをまとめます。
- 特許を受ける権利は、譲渡や相続が可能です。
- 特許出願の行方は、権利関係や先願主義に基づいて判断されます。
- 権利を確実に取得するためには、乙との交渉や出願人名義変更などの対策が必要です。
- 特許に関する問題は、専門家である弁理士に相談することが重要です。
特許に関する知識は、知的財産を守り、ビジネスを成功させるために非常に重要です。今回の解説が、特許に関する理解を深める一助となれば幸いです。