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特許権共有における「保存行為」とは?差し止め請求や無効審判を単独でできる理由を徹底解説!

【背景】
特許法の解説書に、「特許権が共有の場合、差し止め請求や無効審判の認容審決に対する訴えは、保存行為にあたるため単独でできる」と記載されているのを見ました。

【悩み】
「保存行為だから単独でできる」という記述の意味が理解できません。「保存行為」であることが、単独で訴えを起こせる理由になっているのか疑問です。また、拒絶査定不服審判は全員で行う必要があるのに、これも保存行為ではないのか疑問に思っています。

特許権共有者の1名でも単独で訴え可能

回答と解説

1.特許権共有と共有者の権利

特許権は、複数の者が共同で所有する「共有」という状態になり得ます(特許法21条)。 共有状態では、特許権の各共有者は、その権利の範囲内で、特許権を行使することができます。 例えば、特許権に基づくライセンス許諾(特許権の使用を許諾すること)や、特許権の譲渡(特許権を他人に売ること)を行うことができますが、これは全員の同意が必要です。しかし、全ての行為について共有者の全員の同意が必要なわけではありません。

2.「保存行為」とは何か?

ここで重要なのが「保存行為」という概念です。これは、特許権という権利そのものを維持・保護するための行為を指します。具体的には、他者の権利侵害に対する差し止め請求(他者に特許権の侵害をやめさせる裁判)、特許権の無効審判に対する異議申し立て(特許権が無効とされた場合に異議を申し立てる裁判)などが該当します。

3.なぜ保存行為は単独でできるのか?

特許権共有者の一人が、他者による特許権の侵害を放置すれば、共有する特許権そのものが損なわれる可能性があります。同様に、特許権が無効とされてしまうと、共有者全員が権利を失ってしまいます。このような事態を防ぐために、共有者のいずれか一人が単独で保存行為を行うことができるというルールになっているのです。これは、共有者の全員の同意を得る手続きに時間を要し、その間に特許権が侵害されたり、無効とされたりするリスクを回避するためです。

4.関係する法律

特許法自体に「保存行為」という用語が明示的に定義されているわけではありません。しかし、判例や学説において、上記のような行為が保存行為として認められています。

5.誤解されがちなポイント

「保存行為だから単独でできる」という記述は、一見すると理由の説明になっていないように見えます。しかし、これは「特許権の維持・保護という重要な目的」を達成するための例外的なルールであることを理解する必要があります。全ての行為が単独でできるわけではなく、保存行為に限定されます。

6.実務的なアドバイス

特許権共有の場合は、共有者間で事前に、特許権の管理や行使に関する合意(例えば、費用負担や意思決定の方法など)をしておくことが重要です。トラブルを避けるため、契約書を作成し、共有者間の役割分担を明確にしておくことをお勧めします。

7.専門家に相談すべき場合

特許権共有に関する紛争は、複雑で専門的な知識が必要な場合があります。共有者間で意見が対立したり、権利侵害や無効審判に巻き込まれた場合は、特許法に詳しい弁護士や弁理士に相談することを強くお勧めします。彼らは、適切な法的措置をアドバイスし、あなたの権利を守ってくれます。

8.まとめ

特許権共有における「保存行為」とは、特許権そのものを維持・保護するための行為であり、差し止め請求や無効審判への対応などが該当します。共有者の1人が単独で行えるのは、特許権の維持という重要な目的のためであり、全ての行為が単独でできるわけではない点に注意が必要です。共有者間での合意形成や、必要に応じて専門家への相談が重要です。拒絶査定不服審判は、特許権取得のための行為であり、保存行為とは目的が異なるため、全員の同意が必要となります。

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