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相続開始後30年、不動産を占有し続けた場合の所有権:時効取得と遺産分割の法的争点

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30年間不動産を占有し、固定資産税も支払ってきた親族は、悪意による取得時効(20年)を主張し、所有権確認の反訴を提起するつもりです。裁判の結果はどうなるのでしょうか?勝てる見込みはあるのでしょうか?
まず、相続とは、被相続人が死亡した際に、その財産(遺産)が相続人に承継される制度です。相続財産には、不動産、預金、有価証券など様々なものが含まれます。相続が発生すると、相続人は相続人全員で遺産を分割する必要があります。この分割を遺産分割といいます。
一方、時効取得とは、ある物を一定期間、平穏かつ公然と占有することで、所有権を取得できる制度です(民法162条)。善意(所有権を有する者から取得したと信じるに足りる理由があること)・無過失(所有権の欠陥を知らず、知ることができなかったこと)の場合には20年、悪意(所有権の欠陥を知っていたこと)・過失(所有権の欠陥を知るべきであったこと)の場合には10年で所有権を取得できます。
今回のケースでは、相続人が30年間不動産を占有し、固定資産税を支払っていたとしても、時効取得が認められる可能性は低いと考えられます。なぜなら、相続開始時点ですでに相続人の共有財産となっている不動産を、相続人である一人が占有していたにすぎないからです。時効取得は、本来の所有者から独立して所有権を取得する制度であり、共有財産を占有している状態では、他の共有者に対して時効取得を主張することはできません。
民法が関係します。特に、相続に関する規定(第877条~第994条)と時効取得に関する規定(第162条)が重要です。遺産分割については、裁判所の調停や審判、訴訟などを通して行われます。
「30年も占有していたのだから、所有権は当然自分のものだ」という誤解があります。しかし、時効取得は、あくまで本来の所有者から独立して所有権を取得する制度です。相続財産は、相続開始と同時に相続人全員の共有財産となるため、相続人同士の間では時効取得は成立しません。固定資産税の納付も、所有権の証明にはなりません。
他の相続人との話し合いが最善です。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停を利用するのも良い方法です。調停が不成立の場合は、裁判による遺産分割を行うことになります。裁判では、不動産の評価額や相続人の状況などを考慮して、公平な分割方法が決定されます。
遺産分割は複雑な手続きを伴うことが多く、法律の専門知識が必要となる場合があります。特に、相続人が複数いる場合や、高額な不動産が相続財産に含まれる場合は、弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。彼らは、遺産分割の手続きを円滑に進めるための適切なアドバイスをしてくれます。
30年間の占有と固定資産税の納付は、時効取得の主張を裏付ける証拠にはなりません。相続財産は相続開始と同時に相続人全員の共有財産となるため、相続人同士の間では時効取得は成立しません。遺産分割協議を行い、円満に解決を目指すか、専門家の力を借りて裁判で解決する必要があります。早期に弁護士や司法書士に相談することが、紛争を回避し、最適な解決策を見つける上で重要です。
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