テーマの基礎知識:行政事件訴訟法と義務付けの訴え
行政事件訴訟法は、行政に関するトラブルについて、裁判を起こすためのルールを定めた法律です。私たち国民は、行政の行為(または不作為)によって不利益を被った場合、この法律に基づいて裁判を起こすことができます。
今回のテーマである「義務付けの訴え」は、行政に対して「〇〇をしなさい」と求める訴訟です。これは、行政が特定の行為をしない場合や、やるべきことをやらない場合に、その行為を義務付けることを目的としています。
義務付けの訴えには、大きく分けて2つのタイプがあります。
- 申請型義務付け訴訟:行政に対して、国民からの申請に対して何らかの処分(許可や認可など)をすることを求める訴訟です。
- 非申請型義務付け訴訟:行政が、国民からの申請とは関係なく、特定の行為をすべき場合に、その行為を求める訴訟です。
行政事件訴訟法37条の3は、この義務付けの訴えに関する重要な規定を含んでいます。特に、第1項と第7項が今回の質問の焦点となります。
今回のケースへの直接的な回答:37条の3第7項と不作為型義務付け訴訟の違い
行政事件訴訟法37条の3第7項は、申請型義務付け訴訟のうち、行政庁が一定の「裁決」(最終的な決定)をすべき旨を求める場合に適用されます。具体的には、審査請求(行政庁に対する異議申し立て)がされた場合で、その審査請求に対する裁決を求める場合を想定しています。この規定は、処分(行政庁の最初の決定)を取り消す訴訟や、無効であることの確認を求める訴訟を提起できない場合に限り、義務付けの訴えを提起できると定めています。
一方、不作為型義務付け訴訟は、申請型義務付け訴訟の一種であり、行政が国民からの申請に対して、一定期間内に何らかの処分をしない場合に、その処分をすることを求める訴訟です。つまり、行政が「何もしない」という「不作為」を対象としています。行政事件訴訟法37条の3第1項第1号に規定されています。
簡単に言うと、
- 37条の3第7項:審査請求に対する「裁決」を求める場合に、他の訴訟ができない場合に限定して適用される。
- 不作為型義務付け訴訟:行政の「不作為」(何もしないこと)に対して、処分を求める場合に適用される。
という違いがあります。
関係する法律や制度:行政不服審査法と行政事件訴訟法
今回のテーマに関連する法律として、行政不服審査法も重要です。行政不服審査法は、行政庁の処分に対する不服申し立て(審査請求)の手続きを定めています。審査請求は、行政事件訴訟を起こす前に利用できる手続きであり、行政内部での紛争解決を図るものです。
行政事件訴訟法37条の3第7項は、この行政不服審査法に基づく審査請求を経た後の、裁判における義務付けの訴えについて定めています。つまり、審査請求の結果に不満がある場合に、裁判で争うためのルールの一つということになります。
誤解されがちなポイントの整理:訴訟提起の条件
義務付けの訴えを提起するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。これらの条件を理解していないと、せっかく訴訟を起こしても、裁判所が審理(判決)をしてくれない可能性があります。
主な条件としては、
- 原告適格:訴訟を起こす人が、その訴訟によって守られるべき法律上の利益を有していること。
- 訴えの利益:訴訟によって、原告の権利や利益が回復される可能性があること。
- 他の救済手段の利用:他の救済手段(例えば、行政不服審査)を尽くした上で、なお救済されない場合に訴訟を起こすこと。
などが挙げられます。これらの条件は、義務付けの訴えだけでなく、他の行政訴訟にも共通する重要なポイントです。
特に、37条の3第7項の場合、審査請求を経ていること、かつ、処分の取消訴訟や無効確認訴訟を提起できない場合に限定されるという点が、訴訟提起の大きなハードルとなります。
実務的なアドバイスや具体例の紹介:どのような場合に利用できるのか
義務付けの訴えは、様々な場面で利用できます。以下に、具体的な例をいくつか紹介します。
- 申請型義務付け訴訟(不作為型):
例えば、建築確認申請を行ったが、行政庁が長期間放置している場合、建築主は、不作為型義務付け訴訟を起こし、建築確認を速やかに行うよう求めることができます。 - 37条の3第7項:
例えば、ある事業者に対して営業許可を取り消す処分が出されたとします。事業者は、この処分に対して審査請求を行いました。審査請求の結果、行政庁が営業許可を取り消すという裁決をした場合、事業者は、その裁決に対して不服がある場合に、37条の3第7項に基づく義務付けの訴えを提起することができます。ただし、処分の取消訴訟や無効確認訴訟ができない場合に限られます。
これらの例はあくまで一例であり、個々の状況によって適切な訴訟は異なります。訴訟を提起する際には、専門家(弁護士など)に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。
専門家に相談すべき場合とその理由
行政事件訴訟は、専門的な知識が必要となる分野です。法律の解釈や、訴訟手続きには、高度な専門性が求められます。以下のような場合は、必ず専門家(弁護士)に相談することをお勧めします。
- 訴訟を起こすかどうか迷っている場合: 訴訟を起こすことのメリット・デメリット、勝訴の見込みなどを判断するために、専門家の意見を聞くことが重要です。
- 訴状(訴えを起こすための書類)の作成: 訴状は、裁判官に訴えの内容を理解してもらうための重要な書類です。正確な法律用語と、論理的な構成で作成する必要があります。
- 訴訟手続き: 訴訟には、準備書面の提出、証拠の提出、口頭弁論など、様々な手続きがあります。これらの手続きを適切に進めるためには、専門家のサポートが必要です。
- 相手方との交渉: 行政事件訴訟では、行政庁との間で和解交渉が行われることもあります。専門家は、依頼者の利益を最大化するために、交渉を有利に進めることができます。
弁護士は、法律の専門家として、あなたの権利を守り、最適な解決策を提案してくれます。
まとめ:今回の重要ポイントのおさらい
今回の質問のポイントをまとめます。
- 行政事件訴訟法37条の3第7項:審査請求に対する「裁決」を求める場合に、他の訴訟ができない場合に限定して適用されます。
- 不作為型義務付け訴訟:行政の「不作為」(何もしないこと)に対して、処分を求める場合に適用されます。
- 義務付けの訴えを提起するには、原告適格、訴えの利益、他の救済手段の利用など、様々な条件を満たす必要があります。
- 行政事件訴訟は専門性が高いため、弁護士などの専門家に相談することが重要です。
行政事件訴訟は複雑ですが、あなたの権利を守るための重要な手段です。疑問点があれば、専門家に相談し、適切な対応をしてください。

