財産を守るために:成年後見制度と問題解決への道
今回の質問は、ご自身の母親の財産が、ご兄弟によって不当に奪われているという深刻な状況から、どのようにしてその財産を守り、今後の生活を安定させるか、という問題です。成年後見制度を利用しているものの、選任された弁護士が十分な活動をしていないという状況も重なり、非常に困難な状況にあることが伺えます。この状況を打開するために、いくつかの視点から解説していきます。
成年後見制度の基礎知識:なぜ必要なのか?
成年後見制度は、認知症や知的障害などによって判断能力が不十分になった人のために、その人(本人)の権利を守り、財産を管理・保護するための制度です。今回のケースでは、母親が脳梗塞の後遺症で認知症を発症し、判断能力が低下しているため、この制度を利用することになりました。
成年後見制度には、大きく分けて「後見」「保佐」「補助」の3つの類型があります。本人の判断能力の程度によって、どの類型が適用されるかが決まります。今回のケースでは、母親の判断能力が著しく低下しているため、「後見」が適用されていると考えられます。
成年後見人(今回のケースでは弁護士)は、本人のために財産を管理し、必要な契約(老人ホームの契約など)を本人に代わって行います。また、本人の身上監護(生活や療養に関するサポート)も行います。
今回のケースへの直接的な回答:現状と今後の対策
今回のケースでは、成年後見人が選任されているにもかかわらず、その活動が不十分であるため、財産が守られていないという問題があります。
裁判所は、成年後見人の解任について、本人の利益を最優先に考えて判断します。しかし、解任は慎重に行われる傾向があり、単に「活動が少ない」というだけでは解任が認められないこともあります。
現状を打開するためには、以下の対策を検討できます。
- 裁判所への働きかけを強化する。弁護士の活動状況について、詳細な報告書を作成し、裁判所に提出します。具体的にどのような活動が不足しているのかを明確に示し、証拠となる資料(弁護士とのやり取りの記録、費用の内訳など)を提出することも重要です。
- 新たな弁護士を探す。解任が難しい場合でも、弁護士の交代を検討できます。裁判所に、より積極的に活動してくれる弁護士を紹介してもらうことも可能です。
- 不正な財産流出を止めるための対策を講じる。兄による財産搾取を止めるために、まずは、母親の財産を保全するための措置を講じます。例えば、母親名義の預貯金を別の口座に移し、兄が勝手に引き出せないようにする、といった対策が考えられます。
- 告訴・告発の再検討。警察が親族相盗例を理由に動かない場合でも、諦めずに、弁護士に相談して、告訴・告発を再検討することも重要です。状況によっては、刑事告訴が有効な手段となる可能性があります。
関係する法律や制度:親族相盗例と成年後見
今回のケースで、警察が捜査に消極的だった理由として挙げられた「親族相盗例」について説明します。
親族相盗例とは、親族間の窃盗などの犯罪について、刑を免除したり、刑を軽くしたりする規定です(刑法244条)。これは、親族間の紛争が、刑事事件として扱われることで、さらに複雑化することを避けるため、また、親族間の和解を促すために設けられています。
しかし、親族相盗例は、すべてのケースに適用されるわけではありません。例えば、被害額が非常に大きい場合や、悪質な行為があった場合には、適用されないこともあります。
成年後見制度は、民法に基づいており、判断能力が不十分な人の権利を保護するための制度です。一方、親族相盗例は、刑法に基づいており、犯罪に対する刑罰を定めるものです。これらの制度は、それぞれ異なる目的を持っていますが、今回のケースのように、両方の制度が関わることもあります。
誤解されがちなポイント:弁護士の役割と解任のハードル
成年後見人の弁護士は、本人のために財産を管理し、必要な事務を行います。しかし、弁護士は、常に本人と密接に連絡を取り合い、すべての行動について本人の了解を得なければならないわけではありません。
弁護士は、専門的な知識と経験に基づいて、本人のために最善の行動をとることが求められます。
弁護士の解任は、裁判所にとって非常に慎重な判断事項です。解任が認められるためには、弁護士に不正行為があった場合や、著しい職務怠慢があった場合など、本人の利益を著しく損なうと認められる場合に限られます。
今回のケースでは、弁護士が十分な活動をしていないように見えるものの、それが「著しい職務怠慢」に該当するかどうかが、解任の可否を左右する重要なポイントとなります。
実務的なアドバイス:証拠収集と専門家との連携
現状を打開するためには、証拠収集が非常に重要です。具体的には、以下の点を意識して、証拠を収集しましょう。
- 弁護士とのやり取りの記録。面談記録、メールのやり取り、電話の録音など、弁護士とのコミュニケーションに関する記録をすべて保管しておきましょう。
- 財産に関する資料。母親の財産状況(預貯金、不動産など)に関する資料を収集し、兄による財産流出の証拠となる資料(通帳の履歴、領収書など)も集めておきましょう。
- 弁護士の活動状況に関する記録。弁護士がどのような活動を行ったのか、その内容を記録しておきましょう。例えば、裁判所への報告書や、関係機関とのやり取りの記録などです。
集めた証拠に基づいて、裁判所に状況を説明し、弁護士の解任または交代を求めます。
また、専門家との連携も重要です。
- 弁護士への相談。今回のケースに詳しい弁護士に相談し、今後の対応についてアドバイスを受けましょう。弁護士は、法的な手続きや、裁判所への訴え方などについて、具体的なアドバイスをしてくれます。
- 行政書士への相談。成年後見制度に関する手続きや、書類作成について、行政書士に相談することも有効です。
- 社会福祉士への相談。高齢者福祉に関する相談や、介護保険制度に関する情報について、社会福祉士に相談することもできます。
専門家に相談すべき場合とその理由:多角的なサポートを
今回のケースでは、弁護士だけでなく、他の専門家にも相談することをお勧めします。
- 弁護士:
- 兄による財産搾取に対する法的手段(告訴・告発、民事訴訟など)について相談するため。
- 成年後見人の弁護士の解任、または交代について相談するため。
- 司法書士:
- 不動産の名義変更や、相続に関する手続きについて相談するため。
- 行政書士:
- 成年後見制度に関する手続きや、書類作成について相談するため。
- 社会福祉士:
- 高齢者福祉に関する相談や、介護保険制度に関する情報について相談するため。
- 母親の生活状況や、介護に関する相談をするため。
複数の専門家に相談することで、多角的なサポートを受けることができ、問題解決の糸口が見つかる可能性が高まります。
まとめ:諦めずに、できることから始めましょう
今回のケースでは、成年後見制度を利用しているにもかかわらず、弁護士の活動不足や、兄による財産搾取という、非常に困難な状況に直面しています。
しかし、諦めずに、できることから一つずつ取り組むことが重要です。
今回の重要ポイントをまとめます。
- 証拠収集:弁護士とのやり取りの記録、財産に関する資料、兄による財産流出の証拠などを集める。
- 裁判所への働きかけ:集めた証拠に基づいて、裁判所に弁護士の解任または交代を求める。
- 専門家への相談:弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士など、様々な専門家に相談し、多角的なサポートを受ける。
- 財産保全:母親の財産を保護するための対策を講じる。
- 告訴・告発の再検討:警察が動かない場合でも、弁護士に相談し、告訴・告発を再検討する。
困難な状況ではありますが、諦めずに、できることから一つずつ取り組むことで、必ず解決の道が開けるはずです。

