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親族相続における包括遺贈と減殺請求権:最高裁判例H8.1.26判決の解説
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この記述の意味がよく理解できません。「相続財産の性質を有しない」とは具体的にどのようなことを意味するのでしょうか? 減殺請求権を行使した場合、相続財産として扱われないということでしょうか? 分かりやすく教えていただけたら嬉しいです。
相続とは、被相続人(亡くなった人)の財産が、相続人(法律で定められた相続権を持つ人)に引き継がれることです。 相続財産には、預金、不動産、株式など、被相続人が所有していたあらゆる財産が含まれます。
遺留分とは、相続人が最低限確保されるべき相続分です。民法では、配偶者や子には、相続分の一定割合(2分の1など)が遺留分として保障されています。 遺言で遺留分を侵害するような相続分が定められた場合、遺留分権利者は、遺言の内容を一部無効として、遺留分を確保するための減殺請求権(遺留分侵害額を請求する権利)を行使できます。
包括遺贈とは、遺言で「私の全ての財産をAに相続させる」といったように、遺言者の全財産を特定の相続人に譲渡する遺贈(贈与)のことです。
最高裁判例平成8年1月26日判決は、遺言で包括遺贈が行われ、遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合を扱っています。 この判決では、「遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しない」と判断されました。
これは、減殺請求によって遺留分権利者が取得する財産は、本来の相続財産とは異なる性質を持つことを意味します。 具体的には、減殺請求によって取得する財産は、遺言で指定された相続人から、遺留分を侵害した分だけ取り戻す権利であり、相続財産そのものではないということです。
民法第1000条以下(遺留分に関する規定)が関係します。この法律は、遺留分権利者の保護を目的として、遺言によって遺留分が侵害された場合に、減殺請求権を行使できることを定めています。
「相続財産の性質を有しない」と聞いて、減殺請求によって取得した財産が全く法的効力を持たないと誤解する人がいるかもしれません。 しかし、これは誤りです。減殺請求によって取得した財産は、確かに相続財産とは異なる性質を持ちますが、法律上有効な権利であり、財産的な価値を持ちます。 ただ、遺産分割の対象にはならないという点に注意が必要です。
例えば、被相続人が1億円の財産を所有し、Aに全財産を遺贈する遺言を残していたとします。 しかし、配偶者Bには遺留分として5000万円の権利があります。 Bが減殺請求を行使した場合、AはBに5000万円を支払う義務を負います。 この5000万円は、AからBへの金銭債権(お金を支払う義務)として発生し、遺産分割の対象となる1億円の相続財産とは別個に扱われます。
相続問題は複雑で、法律の専門知識が求められるケースが多いため、少しでも不安があれば、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。 特に、高額な財産や複雑な家族関係が絡む場合は、専門家のアドバイスが不可欠です。 誤った手続きや判断によって、大きな損失を被る可能性があるためです。
減殺請求によって取得する財産は、遺産分割の対象となる相続財産とは異なる性質を持ちます。 これは、遺留分権利者が遺言の効力を一部無効として、侵害された遺留分を取り戻す権利であるためです。 相続に関する問題で迷う場合は、専門家に相談することが重要です。 専門家の助言を受けることで、安心して相続手続きを進めることができます。
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